Making of Recovery TA [6]

前回に引き続き、初回問題データチェックの話。

初回データチェックは、アイデアを実際にデータの形にしてみて、これで本当に問題として成立しそうなのかということを判断するために行ないました。そのためやり直しがきくように割と早い段階で行なっています。

前回書いたように、当初の予定における第1問はこの初回チェックで破綻していることが判明し、軌道修正することになったのでした。

その他の問題はどうだったのでしょうか。それぞれの問題がどういうものだったかということについてはこのシリーズの4回目をご覧ください。上から順に第1問、第2問、…となっています。

まず第2問(最強の矛・盾取得問題)。この問題は初回チェックの段階ではシナリオ進行度が予定したところまで届いておらず、チェックできず。完成を急ぐように指示しました。

一方第3問(ラフレシア撃破問題)。この問題には大筋で欠陥は無く、最初から持っておく資源についての検討が行われました。FF12で稼ぎというと、ゼリー狩りを筆頭にLPも金も同時に手に入る場合が多いのですが、この問題ではそうした稼ぎをなるべく回避させたかったので金を最初からいくらか持たせておくべきだろうということに。

この問題の攻略はリフレクトメイルを装備して戦うのがベストなのだろうと思っていたところ、問題データ作成者の側から「リフレクは魔法で用意し魔装備で魔力を上げて戦うというのもいいかも」と提案が。攻略の幅が広がるのはリカバリーTAにとっては面白いことです。これを計算に入れて、重装備ライセンスも魔装備ライセンスも取得済みにすることにして、また後の調整で最初の資金源を細かく調整しようということになりました。

第4問(ラストエリクサー取得問題)は、指示したとおりの進行度には達していたけれど「通常プレイっぽく進行して」との指示がうまく伝わっていなかったようで、なぜか魔法特化でリフレク魔法反射前提で戦うしかないような編成になっていました。…それは明らかに「知ってる」人のやりかただと思うのですが…。またアイテム集めも終わっておらず、金もLPも不足した状態だったので、ここら辺の完成度を高めるということがとりあえずの課題に。

第5問(バルフレアのみ高レベルラスボス撃破問題)は、レベルの低いキャラが大量のエクスポーションフェニックスの尾によるサポートに回り、バルフレアディフェンダーバッカスの酒で戦うという攻略をチェックで見せてもらったのですが、これを見て最初に見たときからほとんど完成していると思いました。…実はそうした攻略法ではさすがに無理があるのですが、緊張感があって見てて面白かったのです。
ですので、この問題は自由度を高くしたかったので、初期所持のアイテムは極力抑え、金は多めに持たせておくという方針だけ確認。

以上が初回データチェックの様子でした。第2問や第4問に不十分なところがあったので、初回チェックから約2週間経て再度チェック。このときの様子は割愛します。そして11月頭に問題作成班でもプレイヤーでもない人をつれてきて、それぞれの問題をテストプレイしてもらったのですが、この話を次回にしたいと思います。

やりすぎ

ゲーム研究会内部では、「コンプリート系/稼ぎ系をきわめるやり込み」を「やりすぎ」、「低レベル・RTAなど制限をつけるやりこみ」を「やりこみ」と呼んで区別しています。もともと、「やりすぎ」は「あのひとゲームやり過ぎだよね大丈夫だろうか」というニュアンスが込められていることは否定しません。

ところでこれらは業界(?)的には「上方向のやり込み」「下方向のやり込み」として呼ばれていることをイリアスくんの指摘で思い出しました。探してみると、出典はPONさんでしょうか?

さておき、一昨年のDQ5リカバリーTAの第5問(圧倒的超戦力を保持した状態でミルドラースを撃破せよ)の元ネタになった「やりすぎ」ネタがついに白日の下にさらされました。実はこのデータを下敷きにしていたため、本人に配慮し第5問だけはデータ配布行なわなかったという経緯が。というわけで紹介。

Making of Recovery TA [5]

決定された問題のアイデアを、チームで分担して実際のデータとして具体的な形にします。私はディレクター的な立場なので、はじめのうち具体的な問題データ作成にはノータッチでいました(一部の問題の仕上げの段階ではタッチしています)。しかし一昨年のDQ5の時にデータを作成した経験から言って、実はこの作業はかなり楽しいです。データ作成自体がひとつの制限プレイであるという内的な楽しみと、実際にお客さんの目の前でプレイヤーが対峙するデータを自分で作るということを考えてどういうネタを仕込もうかなと考える外的な楽しみのふたつが味わえます。これこそリカバリーTA問題作成の醍醐味です。

データ作成は8月の終わりくらいからはじめ、10月の頭ころに一度作られたデータをチーム全体で見る会合を開きました。そうして行なわれた第1回データチェック会合。いきなり重大な問題に気づいてしまいます。

それは第1問。今までわざと曖昧にしてきたのですが、じつはこの問題は元々

  • ゲートクリスタルに一切触れないデータを作る。
  • サブイベント「アースドラゴン退治」をアースドラゴンと戦うことができるまで進めておく。
  • バーフォンハイムからスタートし、レイスウォール王墓でデモンズウォール(手前)を倒すとクリア

とする予定でした。バーフォンハイムからチョコボに乗ってラバナスタ経由でレイスウォール王墓までチョコボを乗り継いで行くけど、途中アースドラゴンを倒せばショートカット開通により時間短縮、とそんな感じで考えていたわけです。今考えると結構アイデアの段階で危うい感じのするネタですが…。

実は、この問題は破綻しているのです。何がおかしいかこれを見てわかりますか?どこが破綻しているのかというと、実はゲートクリスタルに一切触れなくても、ラバナスタはテレポ可能な地点に登録された扱いになっているのですね。さらに、テレポストーンはバーフォンハイムで買える。…おわかりですね。

これは盲点でした。詰めが甘かったのかもしれませんが…リカバリーTAの問題作成はこういうトラブルも起こりえます。昨年は念のため10月頭チェックを入れておいたのは正解だったと言えます。一昨年のDQ5のときは11月頭くらいまでのんびり*1データを作り、その後問題作成半全員でブラッシュアップをかけるという感じでやっていました。

この段階ならアイデア練り直し・データ作り直しもがんばれば間に合うかと思いましたが、最初のアイデアはできるだけ活かしたいし、作ったデータも無駄にしたくない。そこでベーシックなコンセプトは変えず、クリア条件を変更しデータもそれにあわせて少しの直しにとどめようという方向性で、新たにどういうクリア条件がいいかを考えることにしました。

とりあえず、ラバナスタに最初からテレポできるようになっているのだから、スタート地点はラバナスタにするべきだろう。その上でテレポが制限された状況下でチョコボを念頭に置いた効率的な移動方法の設計を問題に含めたい。そしてプレイヤーに選択の幅を持たせ、戦闘も交えることのできるアイデア…。と問題にふさわしい条件を考えていくと、各地に点在するモブをいくらか倒してもらうのがよいのではないかというアイデアに突き当たりました。

他にも「ドクターシドを倒す」「ラバナスタ以外のゲートクリスタルに10個触れる」など別のアイデアもありましたが、「プレイヤーに選択させる」といった要素、また「戦闘を含む」という要素、「達成したのがわかり易いクリア条件にする」といったことを考えて、最終的にモブをあと2体倒すとクランランク上昇する状況にしておいて「バブル入手」に。条件が明快に書けるしラバナスタで始まりラバナスタで終わる(クランショップでバブルを買うという想定なので)、ひょっとしたらラバナスタだけで片がつく場合もあり得る、という問題になったのでした。

私はこれでよかったと思っているのですが、「バブル入手」はわかりづらいという意見も。これは当日配布のリーフレットでフォローしましたが。リーフレットの話は後々したいと思います。さて、今日はかなり長くなってしまいましたがまだ他の問題の初回データチェックの話が終わっていません。次回はこの続きになります。

*1:駒場祭は11月20日前後で開催

PS2DQ5リカバリーTA(2010)

先日もお伝えしましたがこの春にPS2DQ5リカバリーTA大会を行ないます。今回はプレイヤーを広く募集します!我こそはと思う方の参加お待ちしております。

公式サイトがオープンしました。

募集要項などこれから追加していきますので、随時ご覧になってくださいませ。

次回のエントリからまたMaking of Recovery TAシリーズ再開したいと思います。

DS-10

ちょっと間が空きましたが今日はMaking of Recovery TAシリーズをお休みして、別のネタで更新。

ついこないだDS-10 plusというゲームを買いました。

KORG DS-10 PLUS

KORG DS-10 PLUS

ゲーム?いやゲームではありません。その実体はDSで稼働するアナログシンセサイザー・シミュレータです。単に音が鳴るだけじゃなくてちゃんと曲をプログラムできる機能(シーケンサ)と作ったシンセの音をタッチペンを用いて演奏するための機能まで搭載してあり、楽曲作成ツールとしても楽器としても使うことができます。当たり前ですが音質もいいです。ニコニコ動画で「DS-10+」などで検索してみるとDS-10だけで作られた楽曲が公開されていて、すごい作品とも出会うことができます。

その音楽的可能性は実際にできた作品を見てもらうのが最も説得力がある*1ので、最近ゲームネタ中心のこのblogでは割愛するとしますが、あまり触れられないけどもそれ以外の部分で私がすごくよいと思ったことがあります。それはタッチペンでほとんど全ての操作が完結するインターフェイスです。

音色を決めるツマミをいじったり、パッチ画面でケーブルをつなぐインターフェイスも小気味よい感じなのですが、特筆すべきはシーケンサの使い勝手。タッチペンでさくさくノート(音)を置いていけるのは、パソコンでのシーケンサ使ってマウスやトラックパッドからステップ入力なんぞちまちまやってたことがある経験からするともう後戻りしたくない心地よさがあります。16分音符までしか置けないという制約はありますが、その分使い勝手が非常に洗練されています。

DSのポータビリティとあわせて考えるならば、思いついたフレーズをスケッチしたり、簡易リズムマシンあるいはメトロノームとして活躍させたり、そういう小回りのきく使い方がありありと思い浮かんできます。こういう使い勝手はなかなか得難いのではないでしょうか。値段を考えると驚異的ですらあります。

それに加えて、kaoss padがタッチスクリーン上に再現されたのがかなりヤバい。気持ちいい音色を作って、適当にキーやスケール(音階)決めて、kaoss pad上でタッチペンをぐりぐりやって音を鳴らすのはそれだけで快感。

振り返ってみると、こういうタッチペン自体の面白さを感じたのは「世界樹の迷宮」におけるダンジョンのマッピング以来かもしれません。その世界樹の迷宮も、3で装備画面をタッチペンで便利にいじれるようになるそうなので、DSにおけるRPGのこうした細かいところでのインターフェイスの改善はこれからというところなのかもしれませんね。キー操作中心のゲームではキー操作で全てを完結したくなりますが、明らかに効率が良くて心地いいものならそっちを使いたくなるのではないでしょうか?

ところで私が持っていたDSは初代のものだったのですが、DS-10のエディットをもっと広い画面で、大きなタッチペンで操作できたらさぞ快適なことだろうと思いDSiLLをついに購入してしまいました。結果、予想に違わぬ快適さでますます嬉しい感じに。DSiなのでDS-10 plusをDSiで動かしたときだけの機能も動きます。初代DS壊れてないのになんとなくでDSiまたはDSiLLを買うつもりは元々なかったのですが、今回のように目的が明確なら仕方ないって感じですね。

Making of Recovery TA [4]

問題のアイデアを5題分そろえたところで、問題作成班で分担して問題データを作成します。しかし、実際に作成に入る前に…というかアイデアを出すのとほぼ同時に、問題の性質によってとるべきでないライセンス、魔法や技、あるいは適正レベル、クリアするべき・あるいはしてはいけないサブイベント(主にモブ)、およびその他の条件を洗い出しておかなければいけません。FF12だと、一度取得したライセンス、買った魔法や技は取り消せません。後から調整が利くのは所持アイテムや金、あと余ったLPを明らかに不要なライセンスに消費するということだけ。なのでここは慎重になります。こういう作業をするのに、アルティマニアは本気で役に立ちます。ほとんどゲーム実際にプレイしなくても調べられますので…。

それぞれの問題でつけたデータの条件は以下のような感じでした。

チョコボレース問題
ゲートクリスタルに一切触れない。シナリオ進行度はドラクロア研究所侵入前(ドラクロアクリア後、アルケイディスの飛空艇の便が増えるので)、エアロガを買わずに黒魔法4(エアロガ、バイオ)ライセンス取得。杖装備1(サクラの杖など)、重装備6(リフレクトメイルなど)ライセンスはとる。レベルは25程度を最低3人。サブイベント「アースドラゴン退治」をアースドラゴン出現条件を満たすまで進めておく。風属性にこだわっているのはアースドラゴンの弱点だからですね。
最強の矛・最強の盾取得問題
レベル25程度を3人(リザーブ3人は低レベルが望ましい)。契約の剣入手までシナリオ進める。ボムキングを倒しておく。白魔法3と6(レイズ、アレイズ)、およびフェニックス効果UP、HPアップ系、軽装備ライセンス取得禁止。レイズ、アレイズは購入禁止。強敵のいるエリアを逃げまわる問題なので、レベル低め、できるだけHPを上げない、蘇生手段に厳しい制限をかけるということを意図しています。
ラフレシアと亀のチョーカー問題
MPの低いバルフレア・フラン・バッシュを最高レベル20程度まで育てる。他のキャラは低レベル維持する。ライセンスは魔力強化、{HP満タン or 瀕死}魔力UP、○○チャージ、消費MPカット、ミストナックおよび召喚、ポーションの知識、フェニックス効果UP取得禁止。またエアロガ、リフレク、リフレガ、デスペル、歩数攻撃の購入禁止。ただし高レベル3名にはエアロガ、リフレクなど魔法系のライセンスは取得させておく。とにかくMPに対して厳しい縛りをかける設定です。またラフレシア戦に必要な戦力は魔法含め金で買わせる意図なので、それらの購入に制限をかけます。デスペルはラフレシアが初期で100%シェル状態なのでこの問題ではほぼ必須です。そこまで読めて当然ということで。
ラストエリクサー取得問題
バハムート起動まで進める。レベル50程度のキャラを最低3人つくる。ダイヤの腕輪とその周辺のライセンスを取得しない。ラストエリクサーをとれるようにするためのイベントの調整は後々行なうのでそれらは放置しておく。バーフォンハイムとミリアムの固定トレジャーは回収してしまう。ダイヤの腕輪入手コストを上げておく意図があります。
主人公一人高レベルラスボス撃破問題
バハムート起動まで進める。バルフレアがレベル50程度、他キャラは全員初期レベル&ほぼ理論最低LP(低レベルキャラもLP獲得が多すぎると、ライセンスを無駄に習得しなくてはならず美しくないので)。バルフレアは装備とアクセサリ、ベリアスのライセンスだけ取得可能。

この中で明らかに難しいというかデータ作成自体なんかのやり込みだろというのが「主人公一人高レベル」です。これはFF12の経験者でかつ時間的余裕もある人にお願いしました。またラフレシアの問題も割とデータ作成難易度が高いので実力のある経験者にお願いしました。チョコボの問題はトリッキーな条件がつくので、クリアはしてないけどやったことある人にお願いしました。残りの2問は通常プレイの延長でいけるだろうと思ったので、未経験だった人にお願いしました。

データ作成開始がだいたい8月末くらいになります。10月の頭にだいたい完成させて、第1回目のチェックを行ない、それからさらに調整を重ねる予定でした。次回は第1回データチェックの段階のお話の予定。